Bright 英語教育

イギリス大学院でTESOL(英語教授法)を履修した、英語教育とイギリスをこよなく愛する高校教師が、英語教育、英語学習、イギリス留学関係、その他諸々を書き綴っていくブログです。日本のbrightな英語教育を思い描きながら…。

Musioを教室へ!?

テクノロジーについてもう一つ。


近年、英語学習サポートロボットを教室に導入しようという動きが加速しています。昨年には人工知能エンジンを搭載した「musio」が新潟県、埼玉県の一部の小中学校で試験的に導入されました。こんな可愛いロボットです。

 

musio に対する画像結果

 

英語で話す機会の充実、発音チェックなど、前項目で言えばSubstitution(代替), Augmentation(拡大)段階での導入がメインとなっているようです。もちろん英語を話してくれて、訂正もしてくれるロボットはとても魅力的で、生徒の英語への関心、スピーキングスキルの向上にも成果が期待できると思います。これまでにも、Kanda et al 2004, Lee et al 2011など様々な学者の研究で、ロボット導入による生徒のスピーキングスキルの向上、またコミュニケーションを図ろうとする意欲(Willingness to communicate)の向上が報告されています。

様々な期待が込められている英語学習サポートロボットの導入ですが、みなさんはどう考えますかね?現状では活用の際に気を付けなければならないことも多いです。

まず、「コミュニケーション能力」の育成についてです。人工知能を搭載したチャットモード機能では、学習者の質問に対し、インターネットでより適切な答えを探し、答えてくれます。しかし、それはやはり人と人とのコミュニケーションとは違います。チャットボットを利用したSha(2009)の研究では、参加者への「どれくらいの質問に正確に答えてくれましたか」という質問に対し、「すべて正確だった」は0%、「少しだけ正確に返ってきた」が49%だったそうです。コミュニケーションが成立しているとは極めて懐疑的です。またロボットの人工的に作られた人格や文化的背景にも疑念を抱きます。現在英語教育の主柱となっている「コミュニケーション能力」の育成は、やはりそれぞれ違った人格や文化的背景を持った人と人とのコミュニケーションでしか育っていかないのではないかと思います。外国人とコミュニケーションを取ることが目的でそこへ向けてのステップとしてロボットを活用することは意味があるでしょうが、ロボットと話すことが目的の授業となってしまったら、それはまずいと思います。英語を勉強しているのはロボットと話すためではない!ですもの。

次に、ロボットは先生の代わりにはならない、ということです。ALTを多く採用するよりも、musioのようなロボットを取り入れた方がコストも掛からず、生徒が英語を使える機会が増える、という発想にはちょっと納得できません。先生の大切な資質の一つが、生徒の発達段階を理解し、適切な内容を適用なタイミングで導入する能力だと思います。ヴィゴツキーのZPD(Zone of proximal development)という考えもあるように、生徒の現状よりもすこーしだけ発展したことを授業に取り入れていくということは、ロボットではなく先生しかできません。先生がしっかりとその場の生徒のニーズを理解して、ロボットをあくまでサポーターとして使うことが重要だと思います。ロボットを教室に導入して、なんだか凄いことをしている気になって、ロボットと生徒のやり取りに授業を任せてしまう、ということは、英語を鍛えるという意味ではあまり意味がないと思います。
ロボットの良い点悪い点を把握したうえで活用すれば、これまで出来なかった様々なことが出来るようになると思いますし、ロボットにはまだまだ未知の可能性があると思います。ただ、ロボットに授業をコントロールされることなく、先生がしっかりとロボットをコントロールしないといけないと思います。