Bright 英語教育

H30年度 イギリスブライトン大学でTESOL(英語教授法)を履修した公立高校教師が、英語教育について感じたこと・学んだこと、その他諸々を書き綴っていきます。 日本のbrightな英語教育を思い描きながら。

英語民間試験 利用延期の問題点

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 先週、英語民間試験の受験への利用を延期するとの発表がありました。教育現場には衝撃が走りました。「おお、ついにか!」「でもこのタイミングでか、、、。」色々な意見が飛び交いました。

 どんな発表だったのか簡単にまとめると、2020年度受験より、センター試験の代わりに導入される大学共通テストに加え、7種類の英語民間試験のうちどれかを2回受験し、その結果を受験に利用できる、という方向で進んでいました。しかし、受験会場数など、地域によって差が出てしまうこと、プレテストを受けたり、対策に費用を投じれるなど、家庭によって差が出てしまうことが懸念されていました。そして、大臣の「身の丈に合った受験を」という発言がこの問題に拍車をかける形となって、結果、2024年までとりあえず延期という形になりました。


ここまではニュースで沢山報じられていますね。

「ああ、良かった延期だ、これでみんなフェアに受験できるね。」

確かにそうかもしれませんし、私も英語民間試験の利用には疑問を抱いていました。

しかし、ほとんどの人が「延期になった」というところで思考停止してしまっているように思えます。

 

この記事では何に問題があるのかその背景をもう少し掘り下げたいと思います。

 

そもそもなぜ英語のテストで4技能を測ろうとしているの?


 それは教育全体の方向性が、従来の知識偏重・詰め込み教育からの脱却を図ること生徒の思考力、表現力を伸ばしていくことを重視し始めたことに深くかかわっています。英語では、リーディングや文法の知識偏重よりも、「話す」「書く」を取り入れたコミュニケーションや、やりとり重視の教育にシフトしていこうという流れがありました。しかし、いくら現場にそう叫んでも、大学入試制度が変わらない限り、入試に向けて勉強するモチベーションが高い生徒らにつられ、現場は大きく方向性を変えられていませんでした。よく高校教育、大学入試、大学教育は三位一体と言われています。そこでついに、入試制度にメスを入れていこうと動き出したのです。4技能図るテストを課せば、バランスよく学習するようになりますよね、と。その動きには問題はないように思えます。時代の変化に合わせて、あるいは生徒たちが将来必要になるであろう力を見越して入試制度を変えていくことには大変意味があると思います。

 

どこに問題がある?

 しかし、民間のテストにそれを一部委ねてしまったということに問題があるように思えます。私の勤務している高校では、今年度から高1、2年生は全員年2回ベネッセのGTECを受験しています。8月に1回目の受験がありましたが、スピーキングテストにおいて全員がタブレットに向かって英語を吹き込んでいる様子は、なんだか少し異様に見えました。「授業ではコミュニケーション重視にせよ」と文科省は言っているのに、大学入学に必要な力を図るスピーキングテストは機械に向かって吹き込むもので、コミュニケーションではないからです。これでは「このように答えた方が高い得点が取れる」といったような攻略法のようなものがすぐに出てきて、結局受験対策の勉強が加速していくように思えます。生徒の「英語を話すこと」へのモチベーションも、「コミュニケーションを取ること」より、「機械に向かって正確な英文を言うこと」に向いてしまうかもしれません。

 

ではどうすればいいの?


 時間と費用をかけて、じっくりと各大学の入試システムをさらに大学独自に多様化していく必要があると思います。英語民間試験であるとか大学共通テストのちょっとした記述問題を取り入れるほかに、「うちの大学入りたかったら、こうゆう勉強してね。」というメッセージを大学の入試を通して生徒に送っていく必要があると思います。なぜか大学は偏差値という良く分からないモノサシでランク分けされてしまっていて、生徒は良く分からないまま、とりあえず偏差値の高い大学を目指します。どんな大学にも長所や特色はあるのに、それを知ろうとしないままで受験する生徒が多くいます。そこの大学で何がしたいの?と聞くと、それは分からないけれど、とりあえず有名だから。と返ってきたりします。時代に合わせて入試を変えていくのであれば、入試を通して、生徒になぜその大学に入りたいのか、を真剣に考えさせる仕組みが絶対に必要です。英語であれば、英語の面接を取り入れたり、エッセイを取り入れたり、大学独自の入試システムがさらに出来ていけば、生徒の学びのモチベーションも変わってくるように思います。詰め込み教育からの脱却、思考力・表現力を問うのであれば、これまでの入試制度からはもっと大きく抜本的に変えていく必要があると思います。

 

 

最後に茂木健一郎さんのツイートです。すごく共感しました。


日本の教育、大学入試を根本的に変えようとしたら、英語民間試験や記述式問題のような小手先のチマチマした変化ではなくて、人的、時間的リソースをかけて、子どもたちの表現する能力をたっぷりと展開するような改革をしないと無理である。諸外国ではすでにやっているんだから、できないはずがない。

 

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 上の三冊を読むと、今後の教育について深く考えさせられます。教育関係者の方もそうでない方も是非読んでみてください!