Bright 英語教育

イギリス大学院でTESOL(英語教授法)を履修した、英語教育とイギリスをこよなく愛する高校教師が、英語教育、英語学習、イギリス留学関係、その他諸々を書き綴っていくブログです。日本のbrightな英語教育を思い描きながら…。

英語の授業は英語で行うべき!?

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2021年度より施行の新学習指導要領(中学 外国語科)に以下のように明記されました。

 

「生徒が英語に触れる機会を充実するとともに、授業を実際のコミュニケーションの場面とするため、授業は英語で行うことを基本とする。その際、生徒の理解の程度に応じた英語を用いるようにすること。」

 

 

中央教育審議会の答申(平成28年12月21日)で述べられた具体的な改善事項では、

 

生徒にとって身近なコミュニケーションの場面を設定したうえで、学習した語彙や表現などを実際に活用する活動を充実させるとともに、高校との接続の観点から、外国語で授業を行うことを基本とするなど指導の改善を図る。

 

とあります。

 

つまり、

「英語にたくさん触れられるように、英語で授業しよう」

「もう基本高校は英語で授業するようにしているんだし、中学も合わせて英語で授業するようにしよう」

ということでしょうか。

 

実際に文科省から各中学校へはオールイングリッシュで授業を行っている授業研究会のDVDが送られてきたりしますし、“どれくらいの割合で授業を英語で行っていますか”というアンケートが来たりします。

“生徒が英語に触れる機会を増やしたい”“英語で考える習慣を付けさせたい”という考えから、基本は英語で授業を行うべきとお考えの先生方も多いかと思いますが、私はちょっと危険だなあと感じています。

そもそも、すでに英語で授業を行うように定められている高校の実態を見ても、勤務校では完全英語で授業を行っている先生はいないように思いますが(笑)、もし中学校で授業は英語で行うことを実行したら、どのようなことが起きるのでしょうか。

 

大きく二つにまとめます!

 

①中身が薄くなり、授業の質が落ちる

語彙数に制限がかかり、授業が薄い内容になってしまう

 英語を理解するということは「読めること」「聞き取れること」からスタートするわけですから、主に知っている単語を使って言語活動を行い授業を展開していくことになります。中学生の段階では知っている単語はかなり限られますから、先生が英語で伝えられる内容には大きな制限が掛かります。当然生徒が英語で「話せること」、「書けること」にも大きな制限がかかり、必然的に中身の薄い授業になってしまうことが想像されます。あーゆーこと、こういうことを英語で言いたい、と頭で思っていても、中学校段階では語彙制約が大きすぎて、言えないストレスの方が断然と大きくなってしまうと考えられます。

理解が追いつかない生徒が多数、分からないまま進んでいく

 また、中学校段階では各クラスで学力差があります。慶應、早稲田を狙う生徒もいれば、勉強に対するモチベーションが持てず、学校に来ているだけで精一杯という生徒も同じクラス内にいるのが現状です。学力上位の生徒にとっては、英語で授業を行っていくことは楽しいチャレンジになるでしょうが、学力が振るわない多くの生徒にとっては、基礎基本の定着が重要な中学校段階で、理解度があいまいなまま進んでいってしまうことが懸念されます。

【分からない → 授業も何を言っているのか分からない → ますます分からない】

の負の連鎖が起きてしまうように思います。

 

 

②英文の仕組みを日本語と対比しながら教えられない

第二言語習得としての特徴を生かしきれない

 基本的には英語を第二言語として習得していくはずです。第二言語習得では、第一言語の知識を利用することが大きなアドバンテージになります。例えば、「experience」という単語を新しく習うとして、文章を用いて意味を推測させていくより、「経験」という日本語で伝えてしまった方が圧倒的に早いです。そんな風に、自分が持っている日本語の知識と組み合わせて理解していくことが第二言語習得では大切です。また、英文の仕組み、現在完了や仮定法など日本語とは異なる用法に関しても、日本語と比較しながら学習する方が言語の違いに気付けるうえ、圧倒的に理解が早く、深くなります。

 

 

どうしたら良いか。

 「え、でもそんなこと言ったら、今までの英語教育と変わらないし、いつまで経っても英語が使える日本人つくれないじゃん、英語脳とかできないじゃん。」


ではどうしたら良いのか。

授業の全てを英語にするのではなく、accuracyの活動、 fluencyの活動で使用言語を分けると良いかと思います。文法事項など、正確性を問うaccuracyの活動では生徒がスムーズに理解していけるように日本語を用いながら授業を展開し、逆に流暢さを問うfluencyの活動では英語オンリーに拘って、戸惑いながらでも英語のみで伝えたいことを伝えていくというふうに分けると効果的だと思います。
「今日は新出文法取り扱うから日本語でやろう、今日はALTとのTeam Teachingだから英語オンリーで活動しよう」、とバランスよく展開していけば生徒を置いてけぼりにすることもなく、授業にメリハリもついて良いと思います。

 

 accuracy, fluencyについてはこちらをどうぞ。

www.bright-english-edu.com

 

様々な議論を呼ぶこのトピックですが、「日本人の教員が教えるメリット」を最大限に生かして、日本語と英語を使い分けていきたいですね。