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【言語学の革新者】チョムスキーの生成文法を分かりやすく解説!

2020年10月11日

こんにちは、タカヒロです。

 

他の生物にはなくて、人間しか持っていない、最大の武器とは何でしょうか?

 

拳銃でしょうか?原爆のような化学兵器でしょうか?

ひょっとすると、「文法的に言語を使えること」なのではないでしょうか?

 

文法的に言語を使えなければ、文化は発展していかないし、コミュニケーションを取ることは極めて困難です。

文法的に言語を使ってきたからこそ、人類は発展してきたと言えます。

 

「では人間はどのように文法的な言語を生み出してきたのか」

そんな言語学において究極ともいえる問いに、言語学と脳科学の分野から真っ向から立ち向かった第一人者がチョムスキーです。

 

この記事では、言語学の革新者であるチョムスキーの生成文法について解説していきます。

 

この記事で分かること

チョムスキーの生成文法についての概要

 

チョムスキーの生成文法を理解することで、私達が普段さり気なく、気にも留めずに使っている「言語という最大の武器」の発端にアプローチすることが出来ます。

また、チョムスキーの生成文法という理論の提唱は、それまで主流であった「オーディオリンガル教授法」という教授理論の基盤を揺るがすことにもなりました。

 

そのように言語の教授方法にも関わってくる理論のため、特に英語の先生を目指す方はチョムスキーの生成文法とは何なのか理解しておきたいところです。

 

それでは参りましょう!

身近にありながらも奥深い、言語学の世界へ!

 

【言語学の革新者】チョムスキーの生成文法を分かりやすく解説!

チョムスキーってどんな人?

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ノース・チョムスキーはアメリカ出身の言語学者で、1950年代に「生成文法理論」を提唱して、言語学の世界を大転換させました。

ガリレオの地動説や、アインシュタインの相対性理論には知名度は劣りますが、彼らに引けを取らない、言語学における革新者として知られています。

その影響力の大きさは著作の引用回数にも表れています。

世界中の人文科学の論文(1980~1992)で引用された文献数は、世界第8位にランクインしています。

しかも、トップ10の中で存命の研究者はチョムスキーたったひとりです。

言語学は「文系」の研究分野として扱われていましたが、チョムスキーは「理系」の発想を持ち込み、言語の本質を科学的に明らかにしようとした最初の人物と言われています。

 

チョムスキーの言語理論は生物学、脳科学など多くの分野と関わるため、その分様々な議論を呼んでいます。

しかし、大きな議論呼んでいるからこそ、理解しようとする価値があります。

 

それでは、生成文法について見ていきましょう。

 

生成文法は奥が深いので、知っておきたい基本的な部分のみをまとめさせていただきました。より詳しく学びたい方は、専門書をご覧ください。

 

チョムスキーの生成文法(Generative Grammar)とは?

 

生成文法を大雑把に捉えてみると、

人間が言葉を生み出すことの根底には、すべての個別言語に共通の文法である「普遍文法」が存在するのではないか。

そして言語を習得する能力は生得的に備わっているのだ。

という理論になります。

 

難しいですね、、、。

 

ポイントを抑えながらなるべくシンプルに解説していきます!

 

 

ポイント① 「行動主義」にNO!を叩きつけた

 

ギリシアのアリストテレス以来、人は「白紙の状態」で生まれてくると考えられてきました。

まっさらな紙に文字を書いていくように、何もない状態から、行動によってすべての知識や能力は習得・蓄積されていくものだと考えられていました。

 

しかし、チョムスキーはそうした「行動主義」にNO!を叩きつけました。

子どもは「耳から聞いて覚える」こと以外に、聞いたこともないような文を正確に、しかも自由に話せるようになるではないか。

言語習得のメカニズムは「行動主義」では説明ができないのではないか、と提唱しました。

 

確かに考えてみると、

例えば日本語では、

「車来るときは注意しよう」

「車来るときは注意しよう」

はどちらも言えますが、

その一方で、

「車来るから注意しよう」

「車来るから注意しよう」

は後者が誤りだと分かります。

 

そうした区別は、誰かに教えてもらったわけでもなく、知らぬ間に正確に使い分けが出来るようになっているから不思議です。

チョムスキーは、そのような母語を獲得する能力は、誰にも生得的に備わっているのだという議論を展開しました。

 

これがチョムスキー理論の革新的であった部分であり、この後説明していく、普遍文法の入り口となります。

 

ポイント② 人は誰もが「言語獲得装置」を持っている

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チョムスキーは、生得的な言語の獲得能力は、人間に固有の絶対的な能力であるとし、「言語獲得装置(Language Acquisition Device; LAD)」と称しました。

 

文法とは人為的に作られたものではなく、脳が生み出すものであって、文そのものを生み出す装置が生まれながらに全員に備わっているのだ、と考えたわけです。

 

 

ポイント③ 個別の言語は「普遍文法」の土台に肉付けされたものである

 

一般的な常識では、それぞれの国や文化で異なる個別の言語が使われていると思われがちです。

英語、ロシア語、アラビア語、日本語、スワヒリ語…、国や地域によって使われている言語は違うよね。ということです。

それに対し、チョムスキーは、人間の言語はすべて「同じ」だと考えて、文法を普遍的に説明する原理を探究しました。

 

全ての言語は根本的には「同じシステム」を持っている。

表面的にはそれぞれ異なるが、根本はどの言語も実は同じ型に基づいているのではないか。

人間の脳には「言葉の秩序そのもの」があらかじめ組み込まれていて、

「人間が言葉を生み出すことの根底には、すべての個別言語に共通の文法」が存在するのだ。

 

と主張したのです。

これが「普遍文法」(Universal Grammar)という発想です。

 

チョムスキーは、生後間もない脳は「白紙」ではなく、「普遍文法」が組み込まれていて、個別の言語はその土台に肉付けされていると考えました。

学校で習う個別言語の文法は、「普遍文法」の結果として現れたものを元にして、人為的な理由を後付けしたものにすぎない、と論じています。

 

英語、ロシア語、アラビア語、日本語、スワヒリ語、、、実はどれも大本の土台は一緒で、人為的に個別の言語として表されているだけなんだ、ということです。面白いですねえ!

 

ポイント④ 人は誰でもどんな言語も習得できるし、多言語習得できる

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チョムスキーの普遍文法の元で考えれば、人は環境によってどんな言語でも習得することが出来ると説明できます。

例えば、もし日本人同士の間で生まれた子供には最初から日本語の文法が組み込まれていたとしたら、アメリカで育ってもなかなか英語が話せない、ということになってしまいますが、そんなことはありません。

中国語の環境で育てば中国語を、アラビア語の環境で育てばアラビア語を習得していくわけです。

 

脳からすれば、幼少期にどんな言語が母語として獲得されるのかは分かりません。

そのため、人間の脳はどんな言葉でも、複数の言葉でも受容できるようにデザインされていると論じています。

実際に、ヨーロッパやインドネシア、アフリカなどでは、経済的環境に関わらず、バイリンガル、トライリンガルと、多言語を話す人たちは多くいます。

 

 

ポイント⑤ 目に見えない構造にこそ着目すべきだ

 

チョムスキーは、すべての言語の共通性・普遍性に注目し、また目に見える部分だけでなく、言語の背後にかくれた構造が重要だ、と述べています。

目に見える現象だけを追っていても、言語が生み出される謎は解明できない、ということです。

チョムスキーは、文を生み出す目に見えない構造を、「内側から」作ろうとしました。

そのため、チョムスキーの理論は抽象的に感じられて難しいのです。

しかし、そうした自然法則を探究したからこそ、現象論に留まらない「サイエンス」になっている、と言えるかもしれません。

 

まとめ

まとめると、

チョムスキーの生成文法のポイントは、

①「行動主義」にNO!を叩きつけた

② 人は誰もが「言語獲得装置」を持っている

③ 個別の言語は「普遍文法」の土台に肉付けされたものである

④ 人は誰でもどんな言語も習得できるし、多言語習得できる

⑤ 目に見えない構造にこそ着目すべきだ

となります。

 

みんな「英語を学びたい」「英語以外にも言語を習得したい」と必死ですが、そもそも「人間だけが持っている言語の能力」って不思議ですよね。

実は自然に日本語が使えるというだけでも、十分幸せなことなのかもしれません。

そのように考えたら、使う言語が何であるかは小さな問題に思えてくるし、国籍なんて関係ないんじゃないかとさえ思えてきます。

言語学の世界は面白いですね!

より詳しくチョムスキーの理論に触れてみたい方はこちらをどうぞ。




 

最後までお読みいただきありがとうございました!

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