英語学習の目的として、コミュニケーション、つまり異文化背景を持った人との知識・意思・感情のやりとりが重要性を増している、ということが叫ばれ続けています。
英語が読めて情報を収集できればいい時代から、英語を使って世界中の人とやり取りをしていく時代になってきている。
そんな時代の変化に合わせて、生徒の英語学習へのモチベーションも変化しているし、学校の授業も変化させていかなければいけない。
今回は、現代の英語学習者のモチベーションについて、また、これからの英語学習で重要度を増していくであろう「国際的志向性 (international posture)」について解説したいと思います。
モチベーションが重要
英語学習を継続させて、英語力を向上させていくには、「モチベーション」が重要だ!!ということは多くの学者が提唱し、研究が進められています。
「学習意欲(モチベーション)」 → 「学習行動」 → 「英語力の向上」
モチベーションがあるから学習行動をし、学習行動をするから英語力が向上する。
まあ当然と言えば、当然ですよね。モチベーションはガソリンのようなもので、ガソリンがなかったらどんなに性能が良い車も走らないのと同じで、モチベーションがなければ、どんなに優秀な人でも英語を勉強しないし、英語力は向上しません。
そもそものモチベーションがなかったら、英語力を向上させるスタート地点に立てないってことになります。
ということで、モチベーションは英語学習ではとっても重要。
一口にモチベーションといっても研究者によって様々な分類がされています。
よく目にするのはGerdner (1985)の区分でしょうか。
Gerderはモチベーションを
integrative motivation「統合的動機」 と instrumental motivation「道具的動機」
に分けています。
統合的動機とは「ああ、英語を話せるようになって、海外の人とやりとりしたいなあ」「ああ、英語出来るようになって、イギリスで暮らしてイギリスの一員になってみたいなあ」というように自分の内側からふつふつ湧き出るようなモチベーションで、道具的動機とは「ああ、就活でTOEIC750取れるように頑張らなきゃ!」「テストで10位以内入ったらどうぶつの森買ってもらえるから頑張ろ!」といったように、自分の外側に動機の要因があるようなモチベーションです。
統合的と道具的、どちらが良い悪いとかではなく、どっちも重要なモチベーションであり、学習する時期によって変化したりもします。
日本人の場合は、普段なかなか英語を使う機会がないということもあり、道具的動機が高めである、という研究結果が多いように思います。
このように、モチベーションといっても様々な分類ができ、これ!という明確な区分はありませんが、英語学習に必要不可欠な要素であることは間違いありません!!
モチベーションを高めるには国際的志向性が重要!!
ではどのようにしてモチベーションを喚起していくのか。
今回注目したいのがYashima (2001)の研究です。
Yashima (2001)の研究によると、日本では周囲に英語でコミュニケーションをする相手が溢れているわけではないし、むしろ、漠然と何か国際的なもの、日本の外の物事への関心や、ああ、海外行きたいなあ、海外で仕事したいなあ、外国人と話せるようになりたいなあ、と言ったような「国際的志向性 (international posture)」が、日本人の英語学習にはモチベーションと深く関わっているのではないか、と提唱しています。
もう少し厳密にいうと、国際的志向性とは、「異文化コミュニケーションを目的とした英語学習ゆえ、国際的な仕事をしたり、異文化の人々と接触するといった行動傾向を統合したコンセプト」と定義しています。
そして、彼女の大学生約300人を対象にした研究では、「学習者が、調査時点までの学習や経験の中で形成してきた、国際的志向性が、学習意欲と結びつき、これまでの学習の集積としての英語力に反映されている」と結論付けています。
つまり、
「国際的志向性」→「学習意欲(モチベーション)」→「学習行動」→「英語力の向上」
のように、日本人の英語学習においては、英語力を向上させるために、漠然とでも海外に興味を持ったり、国際的に活躍したいなあというイメージを持ったりと、「国際的志向性」をもつことがとっても重要なカギとなるということです!!
道具的動機だけでも、短期的には英語力は向上するかもしれないけれど、長期的にみて、英語力を高めたいのであれば、「国際的志向性」をまず持て!と。
実際に英語力の伸びる生徒のほとんどが「海外への憧れ」をもっているなあと感じるので、ものすごく納得です。
さらに彼女の研究では、「英語教育の目的がコミュニケーションや異文化理解に移行すればするほど、国際的志向性が関与する度合いは増していく」と述べています。
つまり、これからの時代、今よりももっと国際的志向性を持っているかどうかが重要になってくる!!ということです。
教員が教室でできることは?
では教員は生徒の国際的志向性を喚起するために、教室では何が出来るのか。
生徒の国際的志向性に影響を与えるであろう要因を挙げてみると、
インターネットによる海外へのアクセス、ALTの存在、教師の話、教材の内容、親の国際的関心、友人の影響、周りに外国人がいるか、海外経験の長い人がいるか、
といったような物理的、人的環境が考えられます。
より具体的に考えると、
今流行りのZoomなどを用いて海外と中継する、教室に留学生や日本で暮らす外国人を招いてコミュニケーションを取る活動をする、世界一周した人が作った動画を見せる、海外のリアルタイムニュースを題材として取り上げる、、、などが考えられるかと思います。
要は教室で「生徒」と「海外」の繋がりを作ること。ここにフォーカスしていくことが大切だということです!
文法を詳しく解説する、長文読解をする、ということも短期的にみれば、道具的動機を刺激できて有効ですが、長期的にみて、生徒の「国際的志向性」を喚起する取り組みを授業を通してやっていくことが重要だなあと思います。
是非、この「国際的志向性」を念頭に置いて、授業を考えていきましょう!!
<参考>YASHIMA Tomoko (2001).「国際的志向性」と英語学習モーティベーション-異文化間コミュニケーションの観点から-