英語教育

脱つまらない授業!これからの英語教師の役割について理想を書いてみた

2021年5月14日

こんにちは、タカヒロです。

日々英語教育の研究をしながら、大学や高校で英語を教えています。

 

「英語の授業」で検索してみると、

「中高の英語の授業は役に立たなかった」「文法訳読ばかりで、話す力が身に付かなかった」

などといった意見が多く見つかります。

 

いち英語教師としては悲しい意見ですが…、

今の生徒にとって魅力的な授業が出来ているのかどうかは常に考えないといけません。

 

時代が変われば、求められる英語力も変わります。

少し前までは「良い大学に進学するため」「文法・読解!」がメインでしたが、

すでに「コミュニケーション力」「実践力」へシフトしています。

いつまでも文法訳読メインで実践力が身に付かない授業をしていたら、生徒が付いてこなくなる恐れがあります。

 

では今の生徒に「あ、この先生の教え方面白いかも!」と思わせるには、これからの英語教師はどういった授業をしていけば良いのでしょうか?

 

理想交じりですが、これからの英語教師の役割について3つの考えを書いてみたいと思います。

 

理想を語らないことには始まりませんもの!

 

脱つまらない授業!これからの英語教師の役割について理想を書いてみた

 

従来の英語教育から変えていくためには、

 

・学習ストラテジー指導を授業に盛り込む 

・生徒の統合的動機を高める

・生徒のinternational postureを高める

 

この3点が特に重要だと考えられます。

順番に見ていきます。

 

学習ストラテジー指導を授業に盛り込む

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まずは学習ストラテジー指導を授業に盛り込んでみるということです。

学習ストラテジーとは、

学習をより容易に、より速く、より楽しく、より自律的に、より効果的にするために、そして学んだことを新しい状況により適応しやすくするために学習者が採る行動

のことを言います。(oxford,2001)

 

学習ストラテジーの効率的な活用が英語力を伸ばすという研究報告は多くされています。

有名なOxford(1990)の研究では、スペイン人、ロシア人の学生を対象として習熟度別で学習ストラテジーの使用度を研究しました。

その結果、スペイン人、ロシア人ともに習熟度の高いグループの方が多様な学習ストラテジーを用いていることが分かりました。

 

他にも、Lai(2009)による、台湾の大学一年生を対象とした研究でも、

英語力の高い生徒ほど多様な学習ストラテジーを心得ていて、学習ストラテジーの効率的な選択と英語力は深く関係している

と結論付けています。

 

英語を教えるだけでなく、学習ストラテジー、つまり「英語の学び方」を伝えられるようになれば、生徒にとって魅力的な授業になります。

一律に全員一緒に同じペースで同じ勉強をしているから授業がつまらないのかもしれません。

 

その生徒の性格や学習スタイルを把握しやすいのは授業を担当している先生のみなので、生徒の習熟度や性格、学習スタイルを考慮したうえで、

「こんな勉強方法を試してみたら?」「他の生徒はこんな方法で勉強しているよ。」

とアドバイス出来ると生徒の食いつきが変わってくると思います。

「生徒の学習ストラテジーの幅を増やしてあげる」

ということが、結果的にその生徒が自律した学習者になり、英語の授業時間以外にも、自分で勉強を進めていけるようになるきっかけとなり得ます。

 

今は自分で動画やアプリで勉強を進められる時代になりましたから、

教員は「教授者」というより「伴走者」「アドバイザー」的な役割を担うことが重要になってくるかと思います。

 

生徒の統合的動機を高める

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生徒の学習モチベーションを高めることも英語教師の役割です。

モチベーションがなければ学習を継続することは出来ませんから、モチベーションの管理は重要です。

 

一口にモチベーションといっても研究者によって様々な分類がされています。

有名なのがGerdner and Lambert (1972)の区分です。

 

Gerder and Lambertはモチベーションを

integrative motivation「統合的動機」instrumental motivation「道具的動機」

に分けています。

 

統合的動機とは「ああ、英語を話せるようになって、海外の人とやりとりしたいなあ」

「ああ、英語出来るようになって、イギリスで暮らしてイギリスの一員になってみたいなあ」というように

目標言語を話す人々の集団に自分も社会的・文化的に入り込んでその集団に一員になりたい気持ちを表すモチベーションで、

 

道具的動機とは「ああ、就活でTOEIC750取れるように頑張らなきゃ!」

「テストで10位以内入ったらゲーム買ってもらえるから頑張ろ!」

といったように、

目標言語が学習者を助けるので、その道具としての言語を手に入れたいと願う気持ちを表すモチベーションです。

統合的と道具的、どちらが良い悪いではなく、どちらも持っていていいし、学習する時期によって変化したりもします。

日本人の場合は、普段なかなか英語を使う機会がないということもあり、道具的動機が高めである、という研究結果が多いように思います。

 

しかし、道具的動機は期間が限定的であることが多いです。

定期テストや入試が終わったら勉強をしなくなるのは、道具的動機がなくなることの影響が大きいです。

一方で、「統合的動機」は長期間のモチベーションになりやすいです。

何らかの統合的動機を持った生徒は、自分の目標に向けて自走していけるようになります。

そこで、生徒の「統合的動機」を刺激する取り組みを授業に盛り込む必要があります。

 

単に「教科書を」教えるのではなく、その教科書がどのように実生活に繋がっているのか、実践力と結びつくのかを示していきたいところです。

いかに生徒に

「外国人と話してみたい」「海外を旅してみたい」

「ホームステイ・留学に行きたい」

「海外ドラマを字幕なしで観れるようになりたい」

「海外に移住してみたい」

などと思ってもらうかがカギです。

 

海外の動画を用いたり、ALTと協力して、「生きた英語」を生徒に示し続けることが必要だと思います。

 

教師が行う活動が、生徒の統合的動機と道具的動機のどちらを刺激するものであるのかは常に考えていきたい所です。

 

 

生徒のinternational postureを高める

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international postureとは「国際的志向性」と訳される概念です。

 

international postureの発案者であるYashima (2001)の研究では、

日本では周囲に英語でコミュニケーションをする相手が溢れているわけではないし、むしろ、漠然と何か国際的なもの、日本の外の物事への関心や、ああ、海外行きたいなあ、海外で仕事したいなあ、外国人と話せるようになりたいなあ、と言ったような「国際的志向性 (international posture)」が、日本人の英語学習にはモチベーションと深く関わっているのではないか

と提唱しています。

 

もう少し厳密にいうと、

国際的志向性とは、「異文化コミュニケーションを目的とした英語学習ゆえ、国際的な仕事をしたり、異文化の人々と接触するといった行動傾向を統合したコンセプト」と定義されています。

大学生約300人を対象にした彼女の研究では、

学習者が調査時点までの学習や経験の中で形成してきた国際的志向性が、学習意欲と結びつき、これまでの学習の集積としての英語力に反映されている

と結論付けています。

国際的な仕事をしたり外国人と友達になったりして、「海外の人や文化と繋がりたい」と思うかどうかが、英語の学習意欲、さらには英語力に大きく関与している。

ということです。

 

逆に言えば、残念ながら

「自分には海外なんて関係ないや…」と思ってしまっている状況では、

英語の学習は長く続きませんし、英語力は伸びていきません。

 

そこに英語教師はメスを入れていく必要があります。

 

・海外で活躍している方をゲストティーチャーとして教室に呼ぶ

・海外の学校と中継を繋げてみる

・学校に英語教室を設置する

・ALTと談笑できる場・時間を設ける

・留学の体験談を話す

・生きた英語のコンテンツを授業に取り入れる

そういった取り組みが、生徒のinternational postureを高めることに繋がります。

 

international postureを高めれば、前述した統合的動機が刺激され、英語力の向上に結び付く可能性が高まります。

海外の魅力を発信して、生徒に海外に興味を持たせることも英語教師の重要な役割だと思います。

 

今は海外の情報を発信しているYou tuberも沢山いるので、その方々を授業で見せることもinternational postureを高めることに繋がるかもしれません。

 

まとめ

 

以上、英語教師の役割について理想を書き綴ってみました。

 

まとめると、

・学習ストラテジー指導を授業に盛り込む 

・生徒の統合的動機を高める

・生徒のinternational postureを高める

 

そう考えると、これからの英語教員の役割とは、

生徒が自分で勉強していけるように「勉強の仕方を教えて、モチベーションを保たせる」

という意外とシンプルな所に辿り着くのかもしれません。

理想を現実にできるように、一歩一歩進んでいきたいと思います。

 

最後までお読みいただきありがとうございました!

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ではまた!

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